大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所竜野支部 昭和36年(ワ)16号 判決

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

原告代表者は

「被告は、原告に対し、金四七一、〇〇〇円、並びに、これに対する昭和三六年一月一二日以降完済に至るまで年六分の率による金員を支払え。)

との判決、並びに、仮執行の宣言を求める旨申し立て、

請求の原因として、次のとおり述べた。

「被告は、『金額四七一、〇〇〇円、支払人被告、満期昭和三六年一月七日、支払地兵庫県揖保郡太子町、支払場所網干信用金庫太子支店、受取人有限会社白鷺滋富食品工業所、振出日昭和三五年一〇月七日、振出地姫路市、振出人右有限会社』の記載がある為替手形一通をその振出日に引き受け、原告は、右受取人有限会社から裏書譲渡を受けて、同手形の所持人となり、さらにこれを株式会社住友銀行に裏書譲渡し、同銀行は、これを株式会社神戸銀行に取立委任裏書し、同銀行は、同手形を、昭和三六年一月一一日、支払場所で呈示したが、支払を拒絶したので、原告は、順次返戻を受けて、同手形を受け戻し、自己以下の裏書を抹消した上、正当な所持人として、本訴により、引受人たる被告に対し、右為替手形金四七一、〇〇〇円、並びに、これに対する満期日以後の昭和三六年一月一二日以降完済に至るまで手形法所定の年六分の率による利息の支払を求めるものである。」

被告訴訟代理人は、当初の口頭弁論期日において、原告主張の請求原因事実全部(但し、後に追加された裏書抹消の点を除く。)を認めたが、後に、自白の一部が真実に反し、錯誤に基づくとして、これを撤回し、答弁及び抗弁として、次のとおり述べた。

「(一) 原告主張の請求原因事実は、左の点を除き、すべてこれを認める。被告の争う点は、次のとおりである。被告が、昭和三五年一〇月七日、本件為替手形の引受をしたことは、事実であるが、当時同手形には受取人及び振出人の署名の記載がなかつたから、かかる手形になした引受行為は、無効であるといわなければならない、現在同手形に受取人及び振出人の署名の記載があるのは、原告の補充権濫用の結果であると思われる。訴外有限会社白鷺滋富食品工業所は、本件為替手形を振り出したものでない。

(二) 次に、原告は、既に本件の為替手形を株式会社住友銀行に裏書譲渡した以上、もはや同手形の正当な所持人ということができない。

(三) 最後に、本件の為替手形の引受、並びに、原告に対する交付がなされたのは、原、被告共通の取引先たる有限会社白鷺滋富食品工業所の経営状態が悪く、その支払手形では他から融資を受けることが困難であつた関係上、同会社の更生、再起を図ると共に、一時的に原告に融資を得させる目的に出たものに外ならず、原、被告間には、原告から被告に対し同手形の支払を請求することはないという特約が成立していたものであるから、この意味においても、原告の本訴請求に応ずることはできない。」

原告代表者は、「被告の右(三)の抗弁事実は、これを否認する。」

と述べた。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例